総務省によるオンラインでの住民票申請にかかわる省令改正について

2021年8月20日、総務省はオンラインでの住民票申請における本人確認方式について省令改正をおこなう意向を公開しました。

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei02_02000234.html

現在、この改正案に関するパブリックコメントが募集されています。

この省令改正は、疑う余地なく、現在当社が提供し渋谷区が採用しているeKYC(顔認証による本人確認)を用いた住民票請求受付サービスを違法とするための改正だと理解できます。この総務省の動きについて、当社の考えをお伝えします。

これまでの総務省の主張と矛盾する改正

そもそも総務省は現行法規において、当社が提供するeKYC方式での住民票申請はできないと主張していました。マイナンバーカードによる本人確認以外でも地方自治体が適切な本人確認方式を実装することを認める但し書きの規定を「本件では適用できない」というのが総務省の言い分です。この点で、総務省は法令の解釈を誤っており、総務省が発出した技術的助言は違法であるというのが当社の主張です。

しかし総務省は現行法規でも当社方式は違法としていたにも関わらず、今回当社方式を明示的に違法にするための省令改正案を出してきました。これは、現行法規だと当社方式が適法であることを認めているようなものです。この時点で総務省の主張は矛盾しており、自分達の主張を正当化・合法化するための省令改正をしようとしていると考えられます。そしてこのような強権的で省益を確保するための省令改正などあって良いはずがありません。

国益ではなく「国(総務省)がやりたいこと」に固執した改正

総務省はこの省令改正によって、マイナンバーカードを使った本人確認以外のオンライン申請手段を断とうとしています。これは誰得なのでしょうか。以前にも言及しましたが、このコロナ禍においてリモートで手続きを完結するための手段は1つでも多く試していくべきだと思います。当社はeKYCに固執するつもりは毛頭なく、ほとんどの人が今すぐ利用できる手段の一つとして提供しています。

この選択肢をあえて総務省は消そうとしています。一体誰のためになるのでしょうか。選択肢があると誰かの不利益になるのでしょうか?選択肢を消すと誰かが幸せになるのでしょうか?

当社および特定の自治体をおさえつけるための改正

現在、日本全国でeKYCを使った住民票申請サービスを提供しているのは当社のみであり、導入しているのは渋谷区のみです。つまり総務省は当社および渋谷区による営みに焦点を当ててこの取り組みを禁止する目的で省令改正をしようとしています。挑戦する自治体、民間企業を国の権力で抑えようとする総務省。当社がイメージする国の役割、理想的な民主主義国家とは程遠いものです。このような狙い撃ちといえる省令改正を行うこと自体、国のあり方も問われることになるでしょう。

国には予算をつけることや、共通基盤のようなシステムを作ることは求めません。ただただ、「フィールド」を作る役割だけを担ってほしい。各自治体や民間企業が住民に豊かな生活を実現できるためのアイデア、サービスを提供するにあたり、その新しい挑戦をするための土壌作りが国の役割であるべきだと思います。国が決める、国が作る必要はないのです。自由に競争できる社会がより良いサービスを生むことにつながります。

利用実態から学ぼうとしない改正

渋谷区では本サービス導入から1年以上にわたってサービスを住民に提供してきました。その利用実態には学ぶことが多くあるはずです。どのくらいの住民が利用したのか、総務省が主張する「申請の改ざん」や「なりすまし」はあったのか。

当然ですが、こういったセキュリティ上の致命的な問題は1件も発生していません。本サービスでは住民票登録地にしか住民票を送付しないので当たり前のことだと思いますが、1年以上の運用によってさらに実績がそれを裏付けています。

その事実から学ぶことなく、とにかくマイナンバーカード以外の選択肢を断とうとする総務省の姿勢からは、総務省がこだわっているのは安全性ではなく「マイナンバーカードが利用されるかどうか」に尽きることがよくわかります。

みんなでパブリックコメントを提出しよう

今回の省令改正は訴訟を決めたときから可能性として見込んでいました。当社は、仮にこのような省令の定めとなれば、当該省令は「デジタル手続法」の委任の範囲を超えるものとして違法であるとの主張を、昨年提起した訴状においても記載しています。

デジタル庁創設前の駆け込みでの省令改正手続きとも思える今回の改正は、法的手続きとしても問題があると思う一方、このような総務省の動きは、行政府の実態が根っこから腐っているという例を如実に表していると思います。この動きのルーツには志がありません。マイナンバーカードという施策を推進したい政府都合による営みです。

当社はマイナンバーカードという選択肢は否定しませんが、オンライン行政サービスの選択肢をそれだけにするのは賛成できない、という立場です。なぜなら、ほとんどの人が今すぐ使える手段ではないからです。

このような志のない日本政府には失望感しかありません。ただし、今回の裁判で政府がどのような手法で意に沿わない活動を抑えようとするのか、それをガラス張りにできたことは大変意義があったと感じています。私たちは民主的な力でこのような政府を自分たちで変えていく必要があり、それは私たちの責任でもあると思います。私たちは政府をより良くするために行動しなければなりません。

そのアクションとして、今回の省令改正案についてのパブリックコメント募集は良い機会だと思います。総務省のこのような実態、今回の省令改正について是非多くの方の意見を政府に投げかけていただきたく思っています。再掲になりますが、以下のリンクから今回の省令改正の全容をたどることができ、意見公募要領(別紙2)にそってどなたでも意見することができます。

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei02_02000234.html

GovTechにかかわる、思いのある地方自治体職員、民間企業、個人、さまざまな方の意見を投げかけることが重要だと思います。ひとつでも多くのパブリックコメントが提出されるよう、当社からも投書しつつ是非皆様の忌憚なきご意見も投げかけていただければ幸いです。

政府の実態を知り、より良くするために私たちがやるべきことをやりましょう。

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