【群馬県】広域ワクチン接種会場の予約システムのモデルケース
群馬県では県が市町村のワクチン接種予約を一括して受け付ける窓口を提供しています。現時点で14市町村が共同利用の仕組みに参加されており、5月25日からは市町村の接種会場に加えて県営接種会場も予約できる一元的な窓口として機能しています。
県単位でこういった窓口を提供する場合、予約者を特定して重複予約や誤った接種券番号の入力を防止する仕組みが、市町村単位でシステムを提供する場合と比べてより複雑になります。その中で、群馬県の予約システムでは市町村単位でシステムを提供する場合と同様にしっかりとした予約者特定の仕組みを実装しています。さらに、下記のようなよりきめ細やかな処理を実装しています。
・1回目予約を取得すると2回目接種の予約が自動的に取得される。
・1回目・2回目の2つの予約を持っているときに、1回目予約をキャンセルすると2回目は自動的にキャンセルされる。
広域接種会場での予約システムの課題
全国のワクチン接種予約のシステムのほとんどは、接種券番号を使って予約者を特定する仕組みを採っています。この接種券番号は市町村の中で一意な(重複しない)番号になっているのですが、市町村をまたぐと重複する可能性があるため、接種券番号だけを拠り所にして予約者を特定することはできなくなります。特定できないということは、重複予約を防止したり、誤った番号の入力に対してエラーを出すことができないことを意味します。
しかしながら、各市町村の接種券番号のデータを集めることができれば、システム的には、予約者を正しく特定することが可能です。予約時に市町村と接種券番号をセットをヒアリングすれば、あとはデータベースを検索するときに、市町村と接種券番号を条件とすれば良いことになります。
これは理論上もプログラムの実装上も決して難しいことではないのですが、すでに構築したシステムにこの改修をおこなう場合、「接種件番号は一意である」というのが大前提となっていれば、前提が変わってしまうために改修範囲がかなり大きくなる可能性があります。
また、接種券番号を「集める」ということに対して、法制度面での整理が必要になります。結果的には自治体をまたいで接種券番号を集めることは可能と思われますが、どの法令をもってして可能と判断するのか、などを調査すること自体に時間を要することが考えられます。また、集めたデータに関するアクセスコントロールについては、うっかりミスが許されない部分なので慎重な権限設計が必要になります。
したがって、市町村での利用を前提とした予約システムをそのまま広域会場で利用することはできず、折衷案としてスピードを重視、重複予約や入力チェックなどの精度は仕様から外す、という検討をすることになると考えられます。
群馬県の予約システムの特徴1: 接種券番号データは各市町村職員がインポートする
群馬県では当初から広域前提での仕様検討がおこなわれていたため、接種券を集める仕組みや権限管理については3月の時点で一通り出来上がっている状態でした。
まず接種券番号含む接種対象者のデータは、県や事業者が集めるわけではなく、市町村職員が自ら共同システムにログインしてCSV形式でインポートする形になっています。データは共同システムに格納されますが、管轄の市町村職員(または管理をおこなう県職員)のみが閲覧できるアクセス制御がおこなわれます。これによって、接種券番号データの登録や管理が県職員に手中することを避け、作業・管理を分散することができるため、運営上のボトルネックを解消できます。
また、接種券番号をCSV形式でインポートする仕組みは、もともと今回のシステムで利用しているApplication PaaSに備わっているため、特段開発する必要がありません。
群馬県の予約システムの特徴2: 重複予約と入力エラーを防止できる
接種券番号のデータが各市町村からインポートされれば、それをベースに予約を制御するのはシステム側の仕事です。予約の流れは下記のようになっています。
・何回目接種の予約かを確認
・お住まいの市町村を確認
・接種券番号を確認
・生年月日を確認(照合のため)
・接種会場を選択
・接種日時を選択
・(オプション)連絡先電話番号を確認 *市町村によってはスキップ
お住まいの市町村を確認した時点で、接種券番号を照会するリストはその市町村に限定されることになり、市町村ごとに正しく予約者を特定することができます。重複予約はブロックされ、存在しない接種券番号は入力時に直ちにはじかれます。
また接種会場も該当市町村で利用可能な会場のみが選択可能となります。多くの会場はいずれかの市町村1つに紐づくようになっていますが、「県営会場」は例外です。県営会場は複数の市町村から共同で利用可能ですが、全市町村ではなく、ある特定のエリアの市町村となります。県営会場は複数あり、それぞれカバーするエリアが決まっています。したがって、予約者に選択された市町村でどの県営会場が利用可能なのか、ということも合わせて判定し、市町村会場と県営会場を合わせて表示するような仕組みになっています。