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【埼玉県和光市】「トークで申請」を活用。あらゆる申請手続きを「自治体側で」LINEトーク化できる仕組み

埼玉県の和光市さんでLINEでパブリックコメントや各種手続きの申請を受け付けるサービスが開始されました。トーク画面の該当するパネルをタップすると対話的な手続きが始まり、聞かれるがままに回答していくと手続きが完了するようになっています。これは当社のChatbot as a ServiceであるGovTech Express上に構築されています。

同様のコンセプトで対話的に行政手続きを済ませられる仕組みは、すでに渋谷区さんや大阪府寝屋川市さんでも「証明証の請求」という手続きで導入されています。住民側としては同じ類のユーザー体験ですが、和光市さんの「トークで申請」は全く新しい仕組みを採用しています。

自治体側で申請をトーク化できる機能

申請手続きというのは全国地方自治体ごとに星の数ほど存在します。住民票の申請や税証明書の申請といったメジャーかつ全国でほぼ同様の手続きについては、専用のChatbotスキルを個別に開発する形態をとっていました。この形態ではそれぞれの手続きに合わせてトークを最適化させることができるのがメリットですが、その反面、新しい申請や亜種的な手続きをサポートするには都度個別開発が必要になり、自治体側の負担が大きくなります。

今回リリースした「トークで申請」は、個別開発を必要とせず、自治体側で任意の申請手続きをどんどん「トーク化できる」という機能です。以下、詳しく。

ブロックのように組み立てるトークで申請のシナリオ

自治体様は管理画面上で「申請」を自由に追加することができます。その申請はいくつかの「質問コンポーネット」を組み合わせて構成されます。申請に必要となる項目をあらかじめ用意された「質問コンポーネント」から選択して、ブロックを組み立てるようにトークを組み立てることができるようになっています。

質問コンポーネントには以下のような種類があります。特に後半のがジワジワきます。

- 選択肢
- テキスト
- 数値
- 年月日・日時
- 郵便番号
- 電話番号
- 位置情報
- 添付ファイル
- 署名
- 予約枠

選択した種類に応じて、LINEのメッセージが動的に生成され、最適なインターフェースで回答できます。例えば、頻繁に利用される「選択肢」型の質問。選択肢を改行区切りで設定しておくだけで、下図のようにボタンが表示されます。

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また、この選択肢は10個を超えると自動的にクイックリプライボタンからWebフォーム型へと切り替わり、選択肢の数によって一番快適なUIとなるよう自動調整されます。*下図は設定によって強制的にWebフォーム型で表示

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もう一つ、今回和光市さんが開始された「中小企業支援金申請」で利用されている「署名」コンポーネントをみてみましょう。このコンポーネントを追加すると、トーク上で指で署名できるパッドが表示されます。ご存知のとおり「押印そろそろやめよう」運動がフツフツしており、その代替としてサイン(自署による署名)というアプローチです。「署名」質問コンポーネントを申請シナリオの最後にポコッと追加するだけで、「自署による署名」が実現できます。

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和光市さんの手続きでは、申請の最後に代表者が署名するステップを入れることで、この「トークで中小企業支援金申請」が成立することになりました。

これらの質問で回答された申請項目はしっかり構造化され、署名は画像データとして各自治体専用の管理環境(クラウド)にセキュアに保存されます。つまり、トークが生成されるだけではなく、そのトークで申請されるデータが保存される器も連動して生成されるようになっています。なので、トークのシナリオを作ると、データベースも勝手にセットアップされます。

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GovTech Expressの管理環境はSalesforce.comを採用しているため、一旦データベースにデータが入ってしまえば、データを確認・修正はもちろん、一覧をCSVで出力したり、レポート機能で集計・グラフ化は気持ち良いくらい捗り、レポート化が楽しくて夜寝れなくなるでしょう。

その他の質問コンポーネント、特に「添付ファイル」もなかなか有用です。これは写真などのデータを送っていただくことができ、申請に必要な証明書類などを画像で送ってもらうことができます。さらに、なんとeKYCのチェックボックスにチェックすると、渋谷区さんで利用されている本人確認書類のOCRや、顔認識を組み込むことができます。

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*ちなみにeKYCとは、オンラインで本人確認するための仕組みです。本サービスでは顔写真付き本人確認書類と、本人の顔写真をポーズを変えて複数枚送っていただくという仕組みになっています。

大津市さんの「LINEでガス・水道の開閉栓申請」

実は他にもすでにこの「トークで申請」を使って手続きをトーク化された事例があります。滋賀県の大津市さんでは、今月一日から「ガス・水道の開閉栓」をLINEで受け付けるサービスをスタートされています。

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こういった生活インフラの申請においては、入力エラーを極力防止するために申請項目それぞれに細かな取り決めがあり、必要な項目も申請者の条件に応じて変動するという一筋縄ではいかないものですが、「トークで申請」機能でその手続きが完結しています。「トークで申請」は単に質問を順につなげて構成するだけでなく、それぞれの質問を文脈に応じて条件分岐しながら、必要な項目だけをヒアリングすることができるようになっています。その他「リアクション」といった、特定の回答に反応する機構も備えています。こういったChatbotの対話ノウハウを、開発側のノウハウで終わらせず、自治体職員様が直接利用できるノウハウにしていくのがこの「トークで申請」で実現したいポイントです。

地方自治体の自律的DXへ

当社は今後この「トークで申請」の機能をさらに充実させ、自治体のあらゆる申請手続きを自治体側で自律的に「トーク化」できる仕組みを提供していきます。

現在官公庁のシステムの多くはプロジェクトごとに立案し、予算要求、入札準備をおこない、プロポーザル実施、契約、構築、という果てしなく気を失いそうな過程を経てサービスインに至ります。公正を期すためのプロセスですが、このプロセスがゆえに時間と費用が余分にかかる部分も否めません。なにより、そもそも新しいことをやるときの精神的ハードルが高く、タフガイ専用のプロセスと言えます。

もし行政職員が自分達で完結して企画から実装まで回せたら、こういったこれまでのIT化に続く万里の頂上的な概念が吹っ飛びます。「アレもトーク化しとくか」みたいな。

とはいえ、まだこれからです。真に自治体内で完結するためには、前述の申請シナリオをより簡単に設定できるように管理側のUXをもっともっと改良していく余地があります。現在は当社と自治体職員様で協働して設定をおこなっています。それでも、個別に開発することに比べると比較にならない速さでサービスを追加していけます。今後、この設定を「なんとなく操作するとできてしまう」レベルにどんどん改良し、地方自治体の自律的DXを激しく促進していこうと思います。

最後に

和光市さんのサービスは、最初に当社がご相談を受けてから本日のリリースまできっかり一ヶ月です。この音速ぶりを実現できるときは、自治体職員様の中に、やたら熱い方がいる場合です。今回もいらっしゃいました。この短い期間でサービスインまで漕ぎ着けるには、庁内での緊張感のある打ち合わせ、パートナーとの折衝をすごいバランス感覚で渡って行く必要があることは容易に想像できます。志と熱意、グッときます。このような共鳴するパートナー様とともに開拓をおこなうことができるのは筆舌に尽くし難い幸せです。

和光市様、ありがとうございました&怒涛の一ヶ月間お疲れ様でした!
そして、まだまだやりましょう。


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