【熊本県合志市】要介護認定の進捗状況をLINEで自動回答。職員と事業者の電話対応がほぼゼロに。
日本では、65歳以上の方で市区町村が実施する介護認定において介護が必要と認定された場合は、介護保険制度に基づくサービスを受けることができます。実施主体(保険者)である自治体は、認定に関する業務以外にも
被保険者証の発行
介護保険事業所の指導監督
介護報酬の審査・支払
など多岐にわたる業務を行っていますが、今回は要介護認定業務の一部を自動化し、照会者(今回の場合は事業者)が自治体 LINE公式アカウントのトーク上で被保険者番号などを送信すると、進捗状況がその場で回答されるという取り組みを紹介します。
1. 自治体概要
2. 要介護認定制度
介護保険制度に基づくサービスを受ける被保険者は、1ヶ月あたりの支給限度額や利用できるサービスを決めるために、要介護認定を受ける必要があります。
認定にあたっては、客観的で公平な判定を行うため、コンピュータによる一次判定と、それを原案として保健医療福祉の学識経験者が行う二次判定の二段階で行うとされていますが、もう少し細かく見ると、[認定調査]を受け、[主治意見書]をもらい、[介護認定審査会]で認定されるという流れになります。
3. 今回の取り組み
認定には1ヶ月ほどの時間を要しますが、これまでは進捗を確認する際は要介護認定の申請者側が市役所へ電話で問い合わせを行っていました。今回の取り組みにより、事業者は架電不要で、頻繁に直近の認定状況を照会できるようになりました。
<事業者側>
合志市の場合、照会できる方は居宅介護支援事業所のみとしています。当該事業所は、合志市から配布された「あいことば」をトーク上に送信または「二次元コード」を読み取り手続きを起動。
その後、続けてトーク上に照会する方の氏名、被保険者番号、申請日の3つの情報を送信すると、当該被保険者の認定調査の日付、主治意見書の日付、審査会予定日が自動で送信されます。日付が未定の場合は、その旨回答がされます。なお、被保険者番号と申請日が一致しない場合は、認定調査の日付などは送信されません。
<自治体職員側>
職員は被保険者番号や申請日のほか、認定調査の日付など日付データを用意し管理画面に一括で取り込みます。合志市では、職員側の作業を可能な限りシンプルにするために週に1度、被保険者に関するデータを一括削除し、最新のデータを一括取り込みするという運用にしています。対象データは月に150~250件ありますが、一括で削除・取り込みが可能なため、週で発生する作業時間は5分ほどに収まっています。
4. BEFORE/AFTER
<BEFORE>
事業者から電話を受けたとき、職員は専用の端末へ移動。そして、被保険者番号と名前をヒアリングし端末で検索し、回答を行っていました。事業者への回答は、月平均で60件ほどあり、1回にかかる対応時間は3分ほど。計180分/月を対応に費やしていました。
<AFTER>
今では、事業者から審査会の日付の照会に関する電話問い合わせはわずかとなりました。一方で、当初は毎月60件ほどの照会件数を見込んでいましたが、3月から5月は平均212件/月と想定の倍以上の照会がされています。
これは、毎週アップデートされるデータに対して、事業者側が都合のよいタイミングで被保険者ごとに個別に照会できるようになり、利便性が向上したことで照会件数が想定を上回っている(たくさん活用されている)要因だと分析しています。
※病院や家族からは引き続き電話で問い合わせてもらっているそうです。この対応は、月10件あるかないかとのことです。
5. 職員インタビュー
今回の手続きの企画と構築に携わった高齢者支援課の堤さんと企画課の菊永さんにお話を伺いました。
- 導入経緯
中原:GovTech Expressを活用してLINEで介護認定の進捗状況を確認するという手続きは合志市のアイディアから生まれましたが、今回の手続きは、どういった経緯から生まれたものなのでしょうか?
堤さん:電話を受けることで、そのときに対応していた業務を一度中断するという流れを変えたいという思いをもっていたので、以前から色々なプラットフォームの情報収集をしていました。
申請者へ日付の情報を公開する方法としては、ホームページに日付や被保険者番号のデータをアップロードする方法もありますが、閲覧した方のパソコンに情報がダウンロードされることに懸念があり他の方法を検討していたところ、合志市がGovTech Expressを導入することになり、そのタイミングで合志市担当の中原さんに相談してみることにしました。
- 構築から公開まで
中原:今までのやり方と変えるということはエネルギーがいることだと思いますが、大変だったこと・やってよかったことを教えて下さい。
菊永さん:GovTech Expressを導入したばかりだったので、GovTech Expressで構築するとどうなるかというイメージをもつのが大変でした。また、覚えることが多く苦労しましたが、アドバイスをもらいながら取り組むことができ、御社へ問い合わせした際のレスポンスも早く助かりました。どの事業者が照会しているかも一覧表(レポート)で確認ができるなど、やりたいことを実現できてよかったです。
堤さん:当初、照会時に必要な情報として、被保険者番号と被保険者の生年月日の組み合わせを検討していました。最終的には被保険者番号と申請日の組み合わせに落ち着きましたが、この部分について、所管部署との調整に思ったより時間がかかりました。
ただ、事業者の方からは、いつでも照会できるという声が聞かれていますし、同じ課の他の職員からも「電話が減ったね」と喜んでもらえて、私自身、事務作業に集中して取り組む環境を実感できたので、取り組んで良かったと思っています。
- ビジョン
中原:今回の取り組みは、事業者も便利になり、そして職員の業務にも良い影響があり、成功事例といえると思います。合志市として、今後GovTech Expressを活用してどういったことに取り組んでいきたいですか?
菊永さん:職員自らがDXによる変化や成功を体験できたことは、市にとって大きな意味を持つと考えています。庁内にこの変化を広めていきたいですし、今後は、イベントの申し込み手続きや窓口予約、施設予約などにも活用し、市民に「便利になったよね!」と感じてもらえる場面を増やしていきたいです。
6. さいごに
今回の取り組みにより短縮された180分という時間は、月あたりの勤務時間に対する割合で見ると大きくないかもしれません。
しかし、作業中断前と同じ集中力に戻るまでにはある程度の時間がかかること考えると、「電話で他の作業が中断されない」という状況を作れたことは、数値化が難しいものの、業務のあり方、進め方に良い影響を与えることができたと考えています。
また、職員が電話対応をしなくて良くなると、例えば繁忙期に複数の職員が同時に休暇を取っても、出勤している職員が電話対応だけで一日終わらずに済むなど、他にも良い変化が期待できます。
Bot Expressでは、照会する方を登録制にした要介護認定の照会手続きのテンプレートもご用意していますので、活用を検討する自治体は是非パートナーサクセスマネージャーまでご相談ください。
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