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Bot Express Showcase 第5回目開催レポート

Bot Express

8月31日、Bot Express Showcase 第5回目を開催しました。
今回ご紹介する事例は「渋谷区」。2016年に全国の自治体で初めてLINE公式アカウントを開設して以降、あらゆる窓口機能をLINE上に実装し拡張し続けています。「全国のリファレンス」となっている、住民目線の先進的な非来庁型行政窓口について、デジタルサービス部宝田様にご登壇いただき全容を公開いただきました。

Bot Expressからは、代表中嶋が登壇。「GovTechの道しるべ」というテーマで、官公庁専用対話型アプリケーション「GovTech Express」を活用したスマホ市役所の考え方、「住民の行動変容を起こした」5つの事例をご紹介しています。

今回は380名以上の方からお申込をいただきました。ノーカットのアーカイブ動画と、ポイントを書き起こしたイベントレポートをお届けします。


プログラム1:GovTecの道標

Bot Express代表中嶋です。まずはじめに、スマホ市役所というものに対する当社の考え方とアプローチについてご説明します。当社の考え方をご説明するにあたって、先日テレビ朝日系列で全国に向けて放送したテレビCMをご覧いただければと思います。

TV CMのご紹介

CMの最後にあったとおり、我々としては変えていくべき「町のふつう」があると思います。「町をより良くしていきたい」というのがBot Expressの思いです。

GovTech Expressについて
それを実現するためのサービスが「GovTech Express」です。
簡単に言えば「スマホ市役所」。スマートフォンの中に市役所の機能を凝縮し、非来庁型であると同時に、住民・自治体と双方向のコミュニケーションや、24時間365日アクセスすることができるというプラットフォームを提供しています。かつ、このプラットフォームは、特定の機能を提供するのではなく、全国の自治体がカスタマイズできるというものになっています。通常は5つの特徴を説明しますが本日は2つご説明します。


一つ目。
説明書がいらないIT」であること。
当社のサービスは基本的にLINEを使うことを前提にしています。ほとんどの住民のスマートフォンにインストールされており、トークという画面は慣れ親しんだものです。「トーク画面をそのまま利用して、行政手続きを完結しよう」、というのが我々のユーザーインターフェースの基本的な設計となっています。
そして、「1問1答でユーザーに質問していく」ことも重要です。「お名前は?」「生年月日は?」と一つずつ聞いていくことによって、ユーザーは次にやるべきことを迷わなくなります。このような誘導的なインターフェースによって、説明書がいらないITとなります。かつ、住民から操作方法について質問をする必要がなくなるということです。
ほとんどの方が、今すぐに利用できる、オンラインの行政サービス」を重要視している関係上、重要な部分です。

二つ目。我々のサービスは作り付けの機能を提供するのではなく、あくまでもプラットフォームです。
その上で何を提供するのかは、自治体の方々が開発を行う、あるいはテンプレートを活用してカスタマイズするなど、自由に自分たちが提供するサービスを選択することができます
右下に記載している機能はこれまでに開発された一例です。相互にシェアする仕組みがあります。他の都市で作られたものをベースにして自分たちの町でもやってみよう、0→1は苦手だけどもベースがあればできるかも、そう思われる方は少なくないと思います。このような土台が日々蓄積されている状態にあります。

自治体の方が開発されたサービスの中で、5つの事例をご紹介します。この事例というのは「当社のサービスを導入いただいた」という事例ではありません。「住民の行動変容を起こしたサービス」をご紹介したいと思います。

<沖縄県与那原町>
学校欠席連絡申請について、早朝深夜でも気兼ねなく連絡ができる点が評価され、現在では保護者8割がLINEを利用し、LINEでの連絡がスタンダードになりました。

<群馬県>
LINEを使った避難訓練は、8万回以上利用されました。好きな時、好きな場所に参加できることで、今までより多くの人々の参加が可能になり、誰でも防災の意識と知識を高められるようになりました。オフラインではなし得なかった、これまでの概念を変える避難訓練と言えます。

<宮崎県串間市>
キャンプ場の予約を電話とLINEで受けられるようにしたサービスですが、9割がLINEを利用しています。電話の場合、1件10分程度かかるので、仮に10件だとすると、約 100分の時間が節約でき、住民と職員の負担が大幅に削減された事例です。

<広島県福山市>
導入を決めてからたった3ヶ月でリリース。マイナンバーカードの受取予約は7割がLINEとなり、これまで電話対応にかかっていた時間が削減され、福山市の掲げる「待たせない」というスローガンを達成しています。
さらに、5割が開庁時間外に行われていて、「日中は忙しくて手続きができない」という人々のニーズに応えています。

<三重県伊勢市>
これまで一時保育の予約は、実際の施設に抽選待ちのために足を運び、施設の前には長蛇の列ができている状態でした。現在はほぼ100%がLINEに変更され、もう並ぶ必要がなくなりました。


行動変容を起こした事例というのは、指標とすべきだと考えます。
これらの活動は税金が財源となっています。財源の元となっている住民にどのようなバリューを提供するのか。過半数の方が新しい選択肢を選ぶということは、それだけ住民の方々が価値を感じているということです。

ただその一方で、数では測れない部分もあります。
アキレス腱が切れてしまった方。外出するのが難しくなると思います。マイナンバーカードがあればコンビニで住民票取得できる、というサービスは便利ですが、そういう人はコンビニにすらいくのが難しい。
家から出ずにどういったソリューションを提供できるのか、を考えていかなければならないと思います。

そういった部分は、決してマジョリティではない、怪我をした方、ハンディキャップのある方、多くの方の「ふつう」が「ふつうじゃない方」も一定数います。そういった方々に、どういったサービスを提供できるのか、が重要なポイントだと思います。

同時に難しいのが、費用対効果です。ごく少数のところに対して専用のサービスを作るのは難しい。ただプラットフォームがあって、その上にいくつものサービスを拡張できる、という状態であれば、そういった方々に対するサービスもきめ細やかに提供できるのではないかと考えています。

これまでご紹介した機能はほとんどが「トークで申請」というフレームワークの上で作られています。いわゆる手続きや申し込みを「トーク」に変換するというサービスです。

当社が創業して間もない頃にはこのフレームワークはありませんでした。本日ご登壇いただく渋谷区さんは、創業後から共に歩んでくれているパートナー自治体の一つです。渋谷区さんのDX戦略や現場の方の思いなど密にコミュニケーション取らせていただく中で、一つの機能、特定の機能を提供するだけでは、「自治体のDX」、当社の言葉でいうところの「スマホ市役所」を実現する上で十分ではないと考えました。

自治体のサービスは自治体ごとにバラバラだと言われますが、ともすれば自治体は自治体ごとに住民に対して適切なサービスを提供しようとされているのだと思います。こういった各自治体独自の事業をDXする場合、自治体職員が開発できる仕組みである「トークで申請」が必要になってくると考えています。その発想の礎となっているのが渋谷区さんとの取り組みです。

プログラム2:渋谷区におけるデジタル戦略、LINE公式アカウントのコンセプトや提供機能、導入効果

渋谷区のご紹介

人口 229,533人(2022年8月1日時点) 
LINE登録者数 53,600人
LINE ID @shibuyacity
実装する機能 証明書の請求(JPKI)、出産助成金の請求、保育園検索、ごみ分別の回答、税関係の請求など

渋谷区公式アカウントの取組経過
2016年にLINE公式アカウントを開設
しました。当初はセグメント配信から始まり、AIチャットbot、位置情報の施設案内、LINEによる予約受付など断続的に拡充を進めてきました。
2020年4月から住民票や税証明のオンライン申請を開始しています。その後様々な行政手続きを実装し、現在では約30の手続きができる状態となっています。登録者数は5万人を超えています。


渋谷区の運用、提供する機能について

LINEのアカウント運用管理はデジタルサービス部が実施していますが、各種申請データの確認や住民への個別連絡は担当部署が実施し、それぞれにアカウントを付与して直接運用しています。利用者は30 代40代の子育て世代が多く5割弱、最近では50代以上の利用も増えている状況です。

機能の一例をご紹介します。

・AIチャットボット
LINE開設当初は受信設定、セグメント配信から始まり、2018年度から子育て・ごみ分野に関するAIチャットボットの運用を開始し、2020年から総合分野に対象を拡大しました。

・LINEによる予約
子育て関連の講座や融資相談等の窓口予約を受け付けます。職員が予め設定することで、自動的に予約枠が埋まっていくシステムです。
各所管部署では予約情報を確認して当日に備えますが、前日には利用者に自動的にリマインドが届き、職員の業務効率化と利便性向上につながりました。

・LINEによる通報
住民は現場の写真と位置情報をLINEで送信するだけで通報ができ、職員はその情報から具体的な場所をすぐに特定でき、迅速な対応が可能になりました。

・LINEによる申請
証明書の交付から保育料の還付請求など、分野の縛りはなく、現在約30の手続きがLINEから行えます。本人確認はJPKI(マイナンバーカードを利用した公的個人認証)とeKYC(顔認証)、手数料等決済はLINE payを利用し、公式アカウントで申請〜本人確認〜決済までワンストップで手続きが完了します。

導入の効果
利用者アンケートでは、約98%が「今までの申請方法より便利だ」「他の申請や手続きについてもLINEを利用したい」と、LINEを利用した行政手続きに好意的な評価をしています。

庁内の実装手順
所管部署と当課が連携しながら1〜2週間で設計・開発〜テストまで完了します。短い場合は1日で済むこともあります。
LINEで可能と思われる申請については、所管部署の業務フローなどをヒアリングし、申請を作成して、当課でテストしていきます。
LINEによる申請事例としては、2週間で実装、開始初日に2,000人近くが利用したというものがあります。これは郵送では考えられなかったことです。最小経費で最大の効果が得られた事例となりました。

新しい取組
2022年7月から実証実験として「ハッピーマザー出産助成金申請」を開始しました。セブン銀行の「ATM受取」を希望された場合、職員が送金操作を行うとセブン銀行に支払情報を連携し、ATMでの現金受取が可能になるという仕組みです。里帰り出産などで近くに銀行がなくても、セブン銀行ATMがあれば現金で引き出すことができ、今後は他の給付金等にも利用可能だと考えています。

GovTech Expressを導入した感想
利便性だけでなく、業務の迅速化、効率化、コスト削減に有効な仕組みだと思います。住民の評価も高く、取組側にとってもやりがいがあり、メリットが高いと考えます。

プログラム3: 質疑応答

Q:LINE実装する手続き、 LINEサービスベンダーの選定はどのように行ったか?
A:(渋谷区宝田様、以下宝田)渋谷区の場合はLINEと包括連携協定を結び、住民のニーズなどを検討し、LINE担当者と共同で開発していました。Bot Expressとは住民票申請の導入に伴い、本人確認手段(eKYC)を入れたいという理由から選択しました。

Q:直近の企画はどうやって上がってることが多いか?
A:(宝田)所管部署から相談があり、実装するパターンが多いです。

Q:LINEに抵抗がある人への対応は?
A:(Bot Express中嶋、以下中嶋) LINE以外のツールはないのか?(LINEを好まない人への対応)という質問を受けますが、LINEと同じシナリオをWebフォームから申請可能なシステムを考えていて、近日公開予定です。

Q :マイナポータルとの棲み分け、今後の展開は?
A:(宝田)渋谷区が目指しているのは、統一的な申請システムではなく、利用者に複数の選択肢を用意し、各自が使いやすいチャネルを使うことを目指しています。LINE、マイナポータル以外にも、行政手続きのオンライン化を進める中で、新たな申請ツールも併せて開発していきたいと考えています。

Q:庁内調整について、サービス導入にあたり、所管部署から反発はなかったか?
A:(宝田)当初はトップダウンで導入しました。該当する所管部署に、LINE導入による効果や必要性について説明し、合意の上で進めていきました。「業務負担が増えるのでは」という不安も上がっていましたが、十分に説明し、納得してもらうことが必要だと思っています。

Q:個人情報、セキュリティ面での不安は?
A:(中嶋)政府のガイドラインに沿っているので心配ありません。一方で、当社としても策は取っており、要望があればLINEを経由せず、直接当社サーバに保存することも可能です。
また、当社のサービスは政府の情報管理システムに関する認定されていて、政府の規格に準拠したものとなっています。

Q:運用について、操作を各課に任せるのは難しいか?
A:(宝田)運用に難しいことはないので、所管部署に任せて問題ないと思っています。ただ、その場合は操作説明をしっかり行っています。
渋谷区では業務ごとに専用チャネルがあり、業務に関する問い合わせをその中でやり取りしています。人事異動などで引き継ぎに漏れがないよう、ナレッジを貯める場所を作っています。

Q:LINE導入したことについて、実際の職員、住民の声は?
A:(宝田)区民の反応は高評価で、アンケートでも「申請が楽になった」といった意見をもらうことが多いです。職員にも概ね評判が良いです。LINE申請が口コミで組織間に広まり、「自分の部署でもLINEでやりたい」という現象も起きています。

Q:LINE導入、費用対効果は?
A :(宝田さん)数字で導き出すのは難しいですが、これまで郵送で行っていたものアンケート、通報などがLINEでできるようになったことで、人的コスト、開発コスト、時間コストが大幅に削減できています。
(中嶋)人件費より大幅に安く、また、システム開発を一から行うことを考えると、大幅に削減できていると思います。

最後に

Bot Expressの伴走体制
パートナーシップ部門は現在4名(人員増員予定)。パートナーとなる官公庁、自治体職員の方々と共に住民に向き合い、導入自治体に伴走します。最良の相談相手となり、導入後も自治体に寄り添いながら、LINE公式アカウントを利用したスマホ市役所の開設を成功に導きます。

まとめ
渋谷区は、2016年に全国の自治体で初めてLINE公式アカウントを開設し、渋谷区LINEを住民との重要接点と位置づけ、あらゆる窓口機能をLINE上に実装し拡張し続けています。今年7月に発表した「ハッピーマザー出産助成金」をLINEから申請可能にし、銀行口座不要で助成金を受け取れるというサービスは、多くの自治体からお問合せをいただき、実装に向けて動き出しています。これらの取り組みにご興味持たれた方は、お気軽にBot Expressまでお問合せください。

登壇者

渋谷区デジタルサービス部 デジタルサービス推進担当課長 宝田英之様
2016年経営企画課在籍時に、LINE株式会社との協定及び公式アカウントの立ち上げに携わり、以降、渋谷区LINE公式アカウントの企画運用を担当。現在はデジタルコミュニケーションに関わる業務に従事。様々なサービスをわかりやすく便利に提供できるように、デジタルコミュニケーションを強化していきたいと考えている。
株式会社Bot Express 代表取締役 中嶋一樹
Salesforce、日本オラクル等でエバンジェリストとしてキャリアを重ね、前職のLINE在籍時に日本初のLINEを使った行政サービスとなる粗大ごみ申請(福岡市)の仕組みを実現。 2019年に株式会社Bot Expressを創業。「お客様は住民、自治体はパートナー」という理念のもと、共鳴していただけるパートナーと最高の住民サービスを提供することをミッションとして事業を推進。趣味はキャンプ。



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