【長崎県波佐見町】家族に寄り添う優しいオンライン手続き。要介護認定調査の予約・取消をLINEで完結。電話対応をほぼゼロに。
要介護認定の進捗状況をLINEで確認できる熊本県合志市の事例を6月に紹介しましたが、今回は更新申請時の認定調査日の予約・取消をLINEで行える事例を紹介します。
LINEで完結する予約手続きはこれまでも紹介されていますが、今回の手続きは、トーク上に表示されるカレンダー(予約枠)が被保険者に応じて自動で切り替わるようになっています。これにより、間違えることなく有効期限内の予約枠を選択することができます。
1. 自治体概要
2. 取り組み
認定更新に関する日程調整を行う際、これまでは職員が対象者(毎月70人ほど)へ電話をかけて、1件ずつ日程を確定していましたが、今年1月からは希望する対象者は開庁時間に関係なくLINEから予約を行えるようになりました。
■予約者側
認定の有効期限が近づくと、対象者は自治体から更新申請の案内を受け取ります。通知や申請書に記載されたQRコードを読み取ると、予約手続きがスタートします。
トーク上で被保険者番号のほか数問の質問に回答すると予約は完了します。波佐見町では訪問調査実施の5日前までであれば、トーク上からキャンセルできるように設定しています。
■職員側
毎月1度、更新対象者の被保険者番号やグループ番号(有効期限を迎える月ごとにグループ化した番号)などの情報を管理画面にインポートしています。なお、年度当初に必要な質問や予約枠の設定を行えば、毎月の作業はこのインポートの作業のみになります。
3. 工夫
今回はGovTech Expressの機能を用いて、2つの工夫を行っています。
工夫①:被保険者番号に応じたカレンダーを表示する
波佐見町では、認定審査会事務処理の都合上、7月末に有効期限を迎えるAさんであれば確実に6中旬〜下旬の予約枠を選択してもらう必要があり、被保険者ごとに異なる適切な予約枠をどのように表示するかが課題となっていました。
そこで今回の予約手続きでは、予約を取る過程で送信される被保険者番号を判定材料に、カレンダーを切り替える設定を行うことにしました。送信された被保険者番号からシステムがグループ番号を判定。この番号に応じて表示されるカレンダーを切り替えるという仕組みです。
これにより、ご本人やご家族はもちろん、ケアマネージャーが複数の被保険者分の予約をする場合でも、間違うことなく適切な時期の予約枠を確保することができます。
工夫②:同じ日付の予約枠が2つ確保されると、システムが同日の残予約枠をクローズにする
調査員のリソース上、実際に対応できる認定調査は1日あたり3件までとなっています。しかし、波佐見町としては可能な限り多い選択肢を提供するため、被保険者側が10:00~、11:00~、13:00~、14:00~の4種類から開始時刻を選択できるようにしたいという要望がありました。
一方で、1日に対応する3つの予約枠のうち1つは、地域包括支援センターが直接対象者から予約を受け付ける分として振り分けたいという意向があり、LINEから予約を取る際は、4種類の開始時間から選べるようにしつつ、1日あたり2組しかLINEから予約できないように制限をかける仕組みが必要でした。
そこで、波佐見町ではGovTech Expressの自動化ツールを用い、同じ日に2件予約が入ったタイミングでその日の枠を閉じ、カレンダーから選択できないようにするという設定を行いました。これにより、可能な限り多い選択肢を予約者に提供しつつ、対応可能な件数以上に予約を受け付けない仕組みを実現できました。
なお、もし予約がキャンセルされ1日あたり1組しかLINE予約が入っていない状態になれば、再度その日の予約枠は解放されます。
4. 職員インタビュー
今回の手続きの企画と構築に携わった長寿支援課の田川さんと企画情報課の檜垣さんにお話を伺いました!
- 導入経緯
中原:今回、なぜオンラインから予約できるようにしようと思ったのでしょうか?
田川さん:介護サービスを受けるためにご家族の方は様々な手続きを行う必要があるのですが、何度も役場と電話のやり取りをする必要があり、その大変さをなんとかしたいなと思っていました。
また、職員から架電した際にすぐに電話を受けられない方、その場で日程を決めることが難しいかたもいらっしゃいます。そういった方が好きなタイミングで予約できる方法があれば便利だと思ったことも今回の取り組みを始めた理由です。
- 活用状況
中原:LINEから予約できるようになり、どういった声がありますか?
田川さん:ケアマネージャーの方からは、空いている日程をトーク上で確認できるので、本人との日程調整がしやすい、審査会の日程を予測しやすくなったと聞いています。
中原:LINEから予約できるようになってから、電話対応の時間はどう変わりましたか?
田川さん:以前は毎週17人くらいに電話をかけていましたが(ラリーがあるのでのべ34回くらいのやり取りが発生)、今では私たちから更新の電話をかける回数は少ない時は週に0回、あっても2回ほどとなりました。
LINEからの予約が認知されてきていると感じていますし、今後さらにLINEからの予約が増えることを期待しています。
- ビジョン
中原:一つ手続きをオンライン化すると、こんなこともできるという発見や、次はこんなことをやってみようというアイディアが出てくるのではないでしょうか。今後、GovTech Expressを活用してどういったことに取り組んでみたいですか?
田川さん:波佐見町では、ご高齢の方のマイナンバーカードの保有率が高いので、予約する際にマイナンバーカードをかざして本人確認ができると、質問数も減らせますしさらに便利になると思いました。
檜垣さん:現在インポートしている被保険者のデータベースを活用したオンライン手続きを増やしていき、住民の入力工数を減らしたりプッシュ配信ができたりと住民サービスの幅を広げていきたいと考えています。
5.さいごに
システムが適切な予約枠を表示できると、予約者側が「いつ頃の予約枠を選べばいいんだっけ」と考えたり悩んだりする必要がなくなります。また、トーク上に表示されるカレンダーから予約可能な枠を確認できるので「⚪︎日は空いていますか?」「10時から空いている日はいつですか?」のようなコミュニケーションを職員ととる必要もなくなります。
ご家族に寄り添いたいという思いから生まれた今回の手続きですが、今回の取材を経て、こうした優しいオンライン行政手続きがどんどん増えてほしいと改めて思いました。
なお、対象者にあわせてトーク上で選択できる予約枠をコントロールする仕組みは、ワクチン接種予約や子どもの健診予約といった手続きでも応用可能です。介護以外の分野でも予約手続きは構築可能ですので、アイディアがある自治体は是非ご相談ください。
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