「LINEで住民票申請」の訴訟。第一回口頭弁論期日における国側答弁と原告側意見陳述の内容
本日、当社がLINEによる住民票申請の是非を問うため総務省(国)を提訴している裁判の第一回口頭弁論期日が開催されました。
総務省の答弁
総務省からは「却下を求める。理由は、おって説明する。」という旨のみが記載された答弁書が提出されました。当社の所感としては、提訴から3ヶ月の時間があったにも関わらず、総務省からは具体的根拠が一切ない答弁書が提出されたことを残念に思っています。
原告(当社)からの意見陳述
原告(当社)からは、代表の中嶋より7分ほどの意見陳述をおこないました。その読み上げた全文を掲載しておきます。
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私(株式会社Bot Express 代表取締役 中嶋一樹)は、20 年にわたって IT エンジニアとしてキャリアを重ねてきました。その中で、もし熟練のエンジニアが官公庁の中にいたら行政の ICT サービスはどのようになるだろうか、という思いを抱くようになりました。
前職、LINE 株式会社在籍時に、全国で初めて LINE で行政手続き(具体的には、粗大ごみの申込み)を行うことができるサービスを開発し、福岡市で実証実験を行うことになりました。実証実験の結果は、利用者の 96%が「便
利だ」と答えるなど想像を超える反響でした。私は、全国でこの革新を起こしすことに専念したいという思いから、この営みに特化したベンチャー企業(株式会社Bot Express)を創業しました。
当社は渋谷区とともに、本人確認方式として顔認証技術を採用した LINE で住民票の写しの交付を申請するサービスを開始したところ、その直後に総務省はこのサービスは法令違反であるとした技術的助言を全国自治体に通知しました。
「ほとんどの人が、今すぐ利用できるサービスであること」。当社は、創業時より、この理念のもとに LINE で行政手続きができるサービスを開発しています。当社が開発したサービスは、住民票の写しの交付申請に限らず、行政手続きを広く行うことができる包括的なサービスとなっています。当社はサービスを 2019 年 10 月にリリースしましたが、わずか一年間で 40 以上の自治体で導入されています。この加速度的な広がりからも、当社のサービスは自治体・住民に強く求められているものであることを実感しています。本件訴訟の対象である住民票申請機能をご検討いただいた自治体は相当数ありますが、すべからく総務省の通知がボトルネックとなり、そこから先の検討が止まっています。当社のサービスを導入した自治体は住民票申請機能を含むすべての機能を利用することができますが、住民票申請機能だけは、総
務省が技術的助言を通知した後、一件も利用されていません。
当社サービスが受け入れられていないわけではなく、総務省の技術的助言が住民票申請機能の導入にあたっての障害となっていることは明らかであると考えます。このことは、当社の利益はもとより、導入を希望している自治体、またこのコロナ禍において当該サービスを利用して来庁せずに行政手続きを行えたはずの住民の利益と安全性を損ねていると考えます。
当社や導入自治体(渋谷区)は、それぞれが責任をもって、住民票申請機能が適法であり、かつ、高い安全性を擁するシステムであると判断しているものです。当然ながら、当社は必要に応じて、システムの安全性等につい
て証明する用意もあります。
本訴訟において最も重要な点は、これまでの経験・知識・スキル、そしてこの国の行政サービスをより良くしたいと言う情熱、その全てをかたむけてサービスを開発している民間事業者に対し、総務省は誤った法解釈、そして国益の観点から合理性を欠く安直な判断の下に、その可能性の芽を摘もうとしていることです。
裁判所においては、総務省の通知が、自治体が当社が提供するサービスのうち住民票申請機能を導入することについての決定的な阻害要因となっていることを直視していただき、司法としての判断を正面から示していただきたく、よろしくお願いいたします。
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今後の予定
次回の口頭弁論期日は2021年3月18日に設定されました。
本訴訟はこのような形でできる限り裁判の経過を公開し、多くの方々に議論いただくことができればと考えています。当社では引き続き、自社が信じるより良い行政サービスが実現されるよう、全力を尽くして参ります。