【群馬県渋川市】全保護者の72%が利用。専用アプリは不要、使い慣れたLINEで実現した保育園への連絡機能
突然ですが、子育てをされている皆さん、お子さんが保育園や学校をお休みする際の連絡手段は何ですか?
群馬県渋川市は、市内にあるすべての公立幼稚園・保育所・認定こども園に、LINEを使った連絡システムを導入しました。保護者は、忙しい朝の時間帯に保育園へ電話をかける必要がなくなり、いつでもスマホで欠席や遅刻、早退の連絡ができるようになりました。一方、保育園側でも電話対応に追われる時間が減り、その時間を別の業務に充てることができるようになりました。渋川市の子育て家庭の日常がどのように変わったのか、ご紹介します。
1. 自治体概要
2. 取り組み
渋川市には、公立の幼稚園・保育所・こども園が全部で9園あり、400人弱の子どもが在籍しています。保護者が子どもの欠席・遅刻などの連絡をする必要がある場合、従来は当日朝に園へ電話するしか方法がありませんでした。しかし、GovTech Expressの導入によって、2024年4月以降は全9園においてLINEでの欠席・遅刻・早退の連絡が可能となりました。
LINEによる連絡ができるようにするために、保護者は事前に「こどもの登録」をしておきます。登録メニューから所属している幼稚園や保育所の名称を選択すると、それぞれ固有のパスコードを求められます。パスコードは、在籍している保護者にだけ事前にお知らせしているので、部外者が勝手に登録することはできません。パスコードを入力したら、あとは子どもと保護者の氏名を入力して登録完了です。
欠席や遅刻、早退の連絡をしたいときは、当日朝の保育園が指定する時刻までに「欠席等連絡」ボタンをタップして連絡します。登録済みの自分の子どもの名前だけが選択肢として表示されるので、保護者はそれを選ぶだけ。いちいち文字入力する必要はありません。連絡内容や欠席の理由、体調不良の詳細も、あらかじめ設定されている選択肢を選ぶだけでOKです。
もちろん選択肢だけでなく、体温や受診状況、その他の詳細な情報を自由に文章で入力することも可能です。友だちにメッセージを送るときと同じように、LINE上でキーボード入力すればOK。園の先生に子どもの状況を具体的に伝えたいというニーズにも、柔軟かつカンタンに対応できます。
3. 結果
この連絡システムの導入からわずか1ヶ月あまりで、全9園に在籍する保護者全体(約370人)のうち、約72%が利用登録をしました。また、1ヶ月あたりのLINEでの連絡件数は、全9園で約350件。もしこれら全てが電話連絡で、1件の対応に3分かかっていたと仮定すると、1ヶ月でおよそ17時間、年間で200時間以上の電話対応時間の削減につながったという計算になります。
また後述するように、電話連絡の場合は園ごとに連絡可能な時間帯が限定されているため、その時間に園に電話が集中してつながらず、保護者が何度も電話をかけなければいけないこともあったそうです。したがって、実際には単なる通話分数以上の時間的負担が保護者側にのしかかっていたと考えると、LINEでの連絡システムの導入効果には、目に見える数字以上のものがありそうです。
4. 利用者の声
LINEでの欠席連絡を導入して、多忙な子育て家庭の生活にも少し変化が生まれたようです。保護者から実際にいただいた声をご紹介します。
5. 職員インタビュー
Q:LINEによる連絡システムを幼稚園や保育所に導入した経緯を教えてください。
A:GovTech Expressを導入して以降、LINEでできる手続きや機能の拡充を検討していました。そんな中、保育所を利用している保護者から「保育所へのお休みの連絡が電話でしかできないことが不便」との声を聞きました。
欠席連絡は当日の朝の限られた時間帯にしかできませんし、なんとか電話をかけることができても、タイミング悪く通話中でつながらないこともあります。LINEを使うことで時間に縛られずに欠席連絡ができれば、忙しい保護者の通勤前の時間にゆとりができないだろうか、と考えました。
Q:導入にあたり、幼稚園や保育所側とどのような役割分担や調整をしましたか?
A:まずは私たちDX推進課が各園・各所を対象に説明会を開催し、GovTech Expressで実現できることを理解していただくところから始めました。各園・各所に対してはアンケートを実施し、現場の先生方の意向を事前に確認させていただきました。その後DX推進課がシステム構築を行い、各園・各所に直接訪問させていただき、概要や操作方法の説明を行いました。
機能実装が決まった後も各園・各所を訪問して打合せを行ったり、現場の先生方向けのマニュアルを作成したりして、運用開始に向けたサポートを行いました。利用していただく保護者の方々には、各園・各所から操作方法の説明をしていただきました。
Q:実装や構築にあたって工夫したことはありますか?
A:LINEによる欠席連絡という新たな取り組みなので、現場の先生方や保護者の方々にとっての使いやすさを意識しました。
例えば、園や所からのお知らせについては、市の公式LINEで送られてくる通知やメッセージに埋もれてしまわないよう、専用のフレックスメッセージのテンプレートを作成しました。
併せて、送迎バスを運行している幼稚園やその保護者からのご要望に応じ、子どもの登園時にバスを利用しない日がある場合の連絡もLINEで受付できる機能を追加しました。
Q:LINEでの欠席連絡の導入後、各所・各園に起きた変化などがあれば教えてください。
A:保護者からの電話連絡の数が圧倒的に減ったそうです。また、園や所からのお知らせ関係は、従来の紙のおたよりとLINEによるメッセージ配信の両方で発信しているのですが、保護者からは「LINEでおたよりを読みました」と言われることが多くなったと聞きました。
情報収集の手段として、なくしたり埋もれたりしがちな紙のおたよりに比べ、スマホを開けばいつでも情報を確認できるLINEの方が使いやすい、ということかもしれません。
5. さいごに
学校や保育園での連絡手段をデジタル化しようとすると、専用の連絡アプリ等の導入が必要になることがあります。GovTech Expressを活用すると、そのような慣れないアプリの使用を住民に強いることなく、多くの人々が日頃使い慣れているLINEだけで各種機能を実装することができます。
今回の渋川市の例でも、LINEを使うメリットを多くの保護者に感じていただきました。忙しい朝、タイミングを見て保育所に電話しなければいけない、というちょっと面倒だった日常が、LINE上で登録さえしておけば、いつでも手のひらの上で、あっという間に完結。これは保護者にとっても、保育園にとっても、そして自治体職員にとっても革新的なことです。そしてそんな革新的なことが、特別なアプリも大がかりな機器も必要とせず、市内全域で実現できた良い事例だったと思います。
Bot Expressでは、あらゆる自治体での「ちょっと面倒だった日常」を革新していくお手伝いをしています。住民の毎日を便利にしていきたい自治体職員の皆様からのご相談をお待ちしております。
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