【富山県魚津市・広島県福山市】オンライン行政手続き(セミナーレポート)
7月29日、全国の自治体を対象に、富山県魚津市、広島県福山市の担当者をお招きし、「GovTech Express」を活用した官公庁・地方自治体の優れた事例を共有するイベント「Bot Express Showcase 自治体DX 第4回」を開催しました。今回は90近くの自治体の方にお申込いただきました。
アーカイブ配信はこちらからご覧いただけます。
当日のイベントのポイントをレポートします。
登壇者紹介
プログラム1: GovTech Expressを活用したオンライン行政手続き紹介
Bot Express平田より、サービス機能紹介を行いました。
その他、私たちのサービスについてはこちらをご覧ください。
プログラム2: 事例紹介
富山県魚津市下野様(→急用による欠席のため、Bot Express淺田より説明)、広島県福山市松岡様より各自治体での活用事例をご紹介いただきました。
富山県魚津市のご紹介(Bot Express淺田)
魚津市のDX キャッチフレーズは「ウオヅ・デジタル・ツナガル」
魚津市では、少子高齢化が進み、将来的な行政の担い手の減少が懸念されています。今後の行政サービスを維持・向上するために、DXを進める必要があありました。
そこで、既存業務を見直し、効率的で持続可能な行政運営及びサービス提供の実現に取り組むため、職員一人ひとりが意識を変え、“デジタル”を用いてこれからの時代に相応しい事業構築を図ることに取り組みました。
また、行政サービスを住民が享受できるよう、住民に寄り添った、住民一人ひとりに“ツナガル”行政サービスの提供を目指しました。
DXの4つの柱として「マイナンバーカードの普及促進」「行政手続き・行政サービスのオンライン化」「業務デジタル化によるサービス向上・業務効率化」「地域社会のデジタル化」を掲げています。
デジタル戦略推進体制
DX推進本部を設置し、各部局の代表者が部局間の連携・調整を行っています。必要に応じて、業務単位でワーキンググループを設置し、DX検討・実践が行われました。
下野氏はDX推進室のメンバーとして各種調整を行っており、魚津市は内閣府が実施する「デジ田甲子園」の富山県代表として選ばれているので、資料作成や庁内の調整をされています。
この組織体制により、各課の連携がしやすくなり、意識が高まったそうです。全職員がデジタル推進していくことは難しいですが、各部署での成功体験の積み上げを大切にされています。
LINE公式アカウントの活用
全国初、LINEをプラットフォームにしたマイナンバーカードによるオンライン行政手続きを開始しています。市のDX施策、予約やキャッシュレス、データ活用等、複数に寄与する重要なポジションを担っています。
マイナンバーカードを使った転出届のデモ
LINE活用の理由
誰が見ても迷わないUI・UXであること、老若男女使い慣れたLINEを活用することで、説明書不要ですぐ使えることが決め手となりました。
利用促進にあたり、以下の施策を講じています。
・毎月「初心者・高齢者向けスマホ教室」を開催。250 人以上(計 20 回教室開催) 参加
・住民の暮らしの利便性向上のため、コロナワクチン接種予約や居住地区別のごみ収集日の通知、各種行政手続や証明書のオンライン申請などあらゆる機能をLINE公式アカウント上に構築
・市庁舎内に、キャッチーなポスターを大々的に掲示。来庁者に対しスマホでも手続きができることを訴求
・オンライン申請を試しやすいように、2023年3月末まで証明書の交付に係る郵送料を無料化
オンライン申請の成果と今後の取り組み
これまでの申請件数は89件、現在の利用年齢層は10代から70代まで(最高年齢は75歳)幅広く、その満足度は98%に上ります。今後も行政手続きのオンライン化を加速し、デジタルに不慣れな住民の利用を促進するため、初心者や高齢者向けのスマホ教室の内容をブラッシュアップし、開催していくことを考えられています。
これまでに前例のない取り組みに対し、不安やリスクより、「全国初の取り組みをしていく」という魚津市の高い意識があり、庁内への理解を得るため、下野様をはじめ、担当課ではその気持ちを関係各課に伝えて説明を尽くされていました。
自治体の新しい取り組みはリスクを伴いますが、魚津市は常にチャレンジを続けています。この姿勢は全国で自治体DXを浸透していくためにとても重要であると思います。
広島県福山市のご紹介(松岡様)
LINE登録者数10万人を突破した時の記事
福山市のDX
「誰もがデジタル化の恩恵を享受できる都市 ふくやま」の実現のため、行政における目標として「行政サービスをいつでも、どこでも受けられるスマート市役所」を掲げています。
LINE公式アカウントの活用
2020年にLINE公式アカウントを開設し、2021年8月時点で登録者数9万人に達しました。同年11月にデジタル化実行計画として「行かない・書かない・待たない市役所」を目指し、既に住民との重要なコミュニケーション手段となっていたLINEに着目しました。そんな中、LINE上で全ての行政手続きができることを知り、GovTech Expressを導入しました。
2022年3月、LINEのリニューアルをし、申請から決済までLINE上で全て完結できる「オンライン市役所」を構築しました。
マイナンバーカードを使った住民票申請のデモ
マイナンバーカード受取予約のデモ
LINE活用の効果
LINEを介した申請は約5割が開庁時間外です。住民がいつでもどこでも申請できる窓口を構築できたと実感しています。マイナンバーカード受取予約は約7割がLINE経由で、職員の負荷を軽減できました。また、住民から担当課への操作についての問い合わせ、担当課からICT推進課への操作についての問い合わせが少なく、これも大きなメリットです。
《住民の声》
「時間に縛られないので助かる」「使い慣れたLINEなのでとても使いやすい」という声が多く寄せられる一方、「質問内容が分かりにくいので改善して欲しい」というご要望に対し、すぐ改善して今後に活かせる状況です。住民がLINEでの会話に慣れているので、コミュニケーションをとりながら良いものが作れていると感じています。
《担当課の声》
初めはデジタル化について各課の理解を得るのが難しかったです。しかしながら、Bot Expressのパートナーサクセスチームと共に、導入メリットを説明しながら各課と交渉を進め、さまざまな声を聞いて改善しながら構築していくことで導入が進みました。現在では、ICT部門が全て管理するというより、各課が必要に応じて取り組み、改善していると実感しています。初めは乗り気でなかった課でも、LINE活用はイメージがしやすいようで、前向きに取り組むことができています。
オンライン行政手続き、推進のポイント
住民にとって使いやすいサービスであることが重要だと考えます。住民が普段使いするLINEとマイナンバーカードがあれば手続きが完了するので、住民からの操作方法の問い合わせはほとんどありません。
また、リッチメニューを考える時に、住民のニーズを把握するため市HPをアクセスを分析し、ニーズの高い情報や手続きを提供するようにしています。
市役所内の連携としては、担当部署のメリットを見出し、目的や必要性の共有をしっかりと行いました。機能実装に向け、私たちの課がきちんとサポートすることで各課の不安や負担を軽減しました。
プログラム3: 質疑応答
Q:手続きによっては、オンラインシステムを使っていても申請後に電話対応が必要となってしまいます。申請者とのやりとりはどのように行っていますか?
A:利用者とのやりとりは全てLINEで完結します。質問を求めたり、アンケート、申請、決済依頼などあらゆるやりとりは全てLINEで完結できます。フォローアップ機能と呼んでいますが、従来の電話メールと比べて段違いのスピードです。
Q:住民票の交付請求について、郵送料は封筒代は市で負担していますか?窓口と郵送で手数料に差はつけていますか?
A:住民にはLINE発行手数料と郵送料を請求していて、封筒代はもらっていません。手数料の差はありません。
Q:オンライン決済種別は何がありますか?
A: 現在はLINE Payとクレジットカードで、PayPayも近日導入予定です。
Q:マイナンバーカードを使った手続きにはどのようなものがありますか?
A:法律上認められている全て、あらゆるオンライン申請が対象です。今後発生する給付金申請なども対応可能です。
Q:サービス開始までどのくらいかかりますか?
A:マイナンバーカードを使った手続きだと2ヶ月程度です。既にテンプレートがあるので、申請シナリオを新しく作る必要はありません。
別途システム提供元の設定上2ヶ月かかりますが、本人確認以外の部分のテストはそれまでに全て完結します。
まとめ
魚津市は全国初の取り組みとして、LINEとマイナンバーカードを使った各種手続きに挑戦しました。その成功を受けて、福山市を始め、多くの自治体が同様の取り組みを開始しています。GovTech Express導入自治体では、他自治体が開発したシステムを追加費用なしで利用可能です。
他の自治体取り組みの中で、ご興味のある機能がありましたら、パートナーサクセス担当までお気軽にお問合せください。