見出し画像

【静岡県長泉町】申請者の95%が利用、LINEとマイナンバーカードを活用した物価高騰対策給付事業。デジタル商品券で当日給付を実現

GovTech Expressで申請から給付の手続きをデジタル化した例として、渋谷区のハッピーマザー助成金(送金方法:セブン銀行ATM送金、口座振込)やバースデーサポート事業(Amazon育児支給券)のほか、長崎県川棚町の生活応援給付事業(ギフティ)がありますが、今回は加盟店で利用できるQUOカードPayのURLを使った長泉町の給付事業を紹介します。


1. 自治体概要

人口:43,165人(2024年12月1日時点)(長泉町HPより
友だち登録者数:18,879人(2025年1月8日時点)
LINEのトーク上で完結する手続き:一時保育の予約
LINE ID:@nagaizumitown

2. 取り組み

長泉町では電子申請やキャッシュレス決済などのデジタル技術に触れることや物価高騰の負担軽減を目的に、2023年9月に3,000円分のデジタル商品券の給付事業を行いました。

対象は2023年8月1日時点に住民登録がある69歳以下の方。申請方法は町の公式LINEアカウントのトーク上から申請を行い、デジタル商品券としてQUOカードPayのURLをトーク上で受け取る方法と、紙で申請を行い、窓口でカードタイプの「QUOカード」を受け取る方法の2通りが用意されました。

町民向けのチラシ

トーク上から申請する場合は、下記の画像(左)のように表示される質問に1つずつ回答すればOK。自治体が審査した後は、画像(右)のようにQUOカードPayのURLを受け取ることができます。

受け取ったデジタル商品券はQUOカードPay加盟店で利用できます。

3. 特徴

LINEで申請から給付までを行う今回の取り組みには下記のような特徴があります。

(1)本人確認に追加アプリのダウンロードは不要

本人確認を行う際の操作方法(チラシより)

LINEのトーク上から行う申請では、本人確認の手段としてマイナンバーカード認証とeKYC(顔)認証が利用できますが、このとき、住民は追加アプリのダウンロードをせずに2つの認証方法を利用できます。マイナンバーカードをスマホの裏面にかざすと氏名、生年月日、性別、住所の4情報の読み取りが完了します。

(2)重複申請をシステムが拒否

住民コードはインポートされた「かな氏名」と「生年月日」の情報を結合した情報です

今回の手続きでは、長泉町が正となる対象者のデータベースをCSVで用意し、GovTech Expressの管理画面にインポートしています。このときに当該対象者が未申請であるかの情報や対象者に一意のQUOカードPayのURLもインポートします。

申請者がトーク上で「てすとたろう2000-01-01」のように、かな氏名と生年月日を結合した情報を送信すると、送信された情報とシステム内にある情報(上記画像青枠の箇所)が一致するかをシステムが判定。それにより、当該データベースに登録のある対象者かどうかの確認がされます。

トーク上から申請が完了すると申請者のデータベースが自動で更新され、未申請のチェックボックスが外れるのですが、この部分のチェックが外れいている申請者の情報を使って再度申請を行おうとしても、システムが申請手続きを拒否するように設定しており、職員がLINEから重複して申請がされたかを確認する必要はありません。

なお、窓口で申請された場合は、管理画面側から1箇所更新すれば反映は完了です。

(3)申請者への給付はボタンをワンクリックで完了

長泉町の場合、複数の担当者が申請内容を確認し、確認した日時を管理画面に保存します。審査完了後、管理画面に配置されたボタンをクリックすると、申請されたスマホ端末に対し、事前にインポートした各申請者に一意のQUOカードPayのURLが自動で送信されます。事前に取り込まれたリンクを加工せずにそのまま送付できるので誤ったURLを送ってしまうこともありません。

4. 結果

今回の給付事業の対象者総数は35,491人。LINEから申請を行うことで、下記のような結果を生むことができました。

また、申請からデジタル商品券の給付まで一貫してオンラインで行い、職員の審査や給付のプロセスも可能な限り自動化したことで、1日あたり382件近い申請があっても最短で当日中にデジタル商品券を給付できた計算になります。

従来のプレミアム商品券事業などと比較すると、職員の事務処理にかかる時間が半分以下に削減され、また、期間中の長泉町公式 LINEの友だち数は約8,500人から約17,500人に増加するなどの効果も出ています。

◼️ 住民からの声
・来庁する手間が省け、数分で申請完了し非常に便利だった
・最短、申請した当日にQUOカードPayが届きあまりの早さに驚いた
・申請からQUOカードPayの受け取りまでオンラインで完結し、デジタル化を実感できた

なお、紙申請の場合は窓口で本人確認を行いその場で「QUOカード」を付与、現物をその場で確認いただき、受領証の記入をしていただく必要があるといったセキュリティ上の理由から本庁舎窓口のみの対応としました。本人確認書類は免許証、マイナンバーカードをはじめとする顔写真付き身分証を使用しました。

5. 職員インタビュー

今回の手続きの企画と構築に携わった企画財政課の長澤さんと古屋さんにお話を伺いました!

- 申請から給付までをデジタル化したメリット

中原:今回、申請のプロセスだけではなく給付方法もデジタル化されましたが、紙で受け付ける申請と比較してどのようなメリットがありましたか?
長澤さん:本人確認や申請書類の電子化により送付事務が激減し、また振込事務が不要となることから、業務量全体が大幅に減少しました。具体的には、従来の現金給付であれば、振込データ作成等の振込作業、また商品券事業であると、購入引換券の郵送、商品券の作成や販売等といった作業が膨大になりますが、今回の事業においてはオンラインで申請をしていただき、QUOカードPayのURLについてもこちらからオンラインで通知をするため、それらの作業が一切なく、大幅な事務の効率化を図ることができました。

長澤さん

- 給付手段について

中原:今回、デジタル給付の手段としてQUOカードPayを選ばれていますが、決め手になったことはありますが?
古屋さん:今回は69歳以下の全町民を対象にしていることから、より多くの方に施策効果が届くこと、キャッシュレス決済を利用したことのない方にも利用しやすいこと、受け取り方法が簡易であることを念頭に事業検討を行いました。スマホが無い方への対応も想定し、カードタイプの「QUOカード」を同時に導入できる点も選定理由の一つになりました。

古屋さん

自治体マイナポイントの制度を使っての事業実施も検討しましたが、大手決済事業者(PayPayなど)が参画していないこと、受け取りにはマイナンバーカードが必要となること、手続きの煩雑さがネックとなりました。

QUOカードPayはスマホがあれば簡単な操作で利用可能なこと、無い場合でもカードタイプの「QUOカード」で対応可能なことから住民が受け取り易い、利用までの手順が明瞭であること、全国の自治体で豊富な実績があること等から最適な商材と判断しました。

- ビジョン

中原:GovTech Expressを活用されてみてどうでしたか?また、今後どういったことに取り組んでみたいですか?
長澤さん:スマホひとつで申請から給付までをオンラインで完結するといった行政サービスの根本的な改革に向け、住民がデジタルを活用したサービスに触れる機会を創出し、従来の給付金などと異なる「効率化」「省力化」をデジタルで実現する体験をしていただけたと考えています。職員にとっても大幅な事務の効率化が図られるといったメリットもあり、今後も様々な行政サービスへの実装に向け取り組んでいきたいと思っています。

6. さいごに

給付事業と一口にいっても、給付を受ける住民にはどのような属性の方がいて、どのような手段が適しているかや、QUOカードPayのURLを配付する職員の審査にかかる精神的な負担を軽くするためにどの部分を自動化するかなど、検討すべき事項は多岐に渡ることが分かります。

GovTech Expressであれば、今回のような自治体職員による細やかな配慮や丁寧な検討結果に応じた給付事業を構築することが可能で、給付の方法も自治体が選択できるほか、データベースページのカスタマイズも職員が自由に行うことが可能です。

自治体職員のアイディアと自由度の高いGovTech Expressを組み合わせて、新しい行政サービスを創造することもできるので、給付事業以外にも「こんな行政サービスがあると住民が喜ぶかも」というアイディアをお持ちの職員がいれば、是非、担当のパートナーサクセスマネージャーまでご相談ください。

<関連情報>


自治体の最新事例や新機能をLINEでお届け。製品デモも操作可能!