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【福井県若狭町】紙からLINEへ。デジタル健康ポイント”ハピポ”への住民参加が5倍以上に
若狭町は、従来の紙方式からLINEへ完全デジタル化した 社会貢献型健康づくり事業「SDGsみんなdeハッピー健康ポイント"ハピポ"」を開始しました。
住民は若狭町LINE公式アカウントを通じて手軽にポイントを貯め、そのポイントを「子どもたち」「地域」「自分」のために活用できる革新的な仕組みです。
特定の年代に偏っていた参加者も、LINEを導入したことをきっかけに働き世代の参加が増加。その結果、前年度の246名から1,302名(約5.3倍)へと大幅に増え、全世代が健康づくりに参加できる環境が整いました。
本記事では、健康増進×地域貢献×デジタル化を実現した若狭町の先進的な取り組みをご紹介します。
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1. 自治体概要
人口:13,353人(2025年1月1日時点)(若狭町HPより)
友だち登録者数:3,707人(2025年2月28日時点)
LINEのトーク上で完結する手続き:SDGsみんなdeハッピー健康ポイント”ハピポ”、自治会連絡機能、特定健診・がん検診予約、上中診療所内科受診予約、児童クラブ欠席連絡、ごみ関連機能、各種証明書申請等
LINE ID:@wakasa-town
2. 取組概要
若狭町は、「誰もが健康づくりを始めたくなる環境」を目指し、従来の紙方式からLINEへの完全デジタル化を実現しました。住民はスマートフォン一つで簡単に健康行動を記録でき、獲得したポイントを 「子ども」「地域」「自分」のため に活用できる仕組みを構築。
誰もが日常的に使用しているLINEをプラットフォームに採用したことで、特に30~50代の働き世代の参加が促進され、若い世代の健康づくりに対する意識が着実に変化しています。
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対象:若狭町在住・在勤・在学者
実施期間
ポイント付与期間:2024年5月18日~2024年12月31日
ポイント交換期間:2024年12月1日~2024年12月31日
ポイント消費期間:2024年12月1日~2025年3月31日
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健康ポイントは、主に2つの方法で獲得できます。
1つ目は「日常活動」による獲得です。体重・血圧の測定や、減塩・野菜摂取といった食生活の改善など、日々の健康習慣をポイント化。LINEのアンケート機能を使って簡単に自己申告でき、継続的な健康管理を促進します。
2つ目は「参加活動」による獲得です。特定健診やがん検診の受診、ツーデーマーチへの参加、各種健康イベント・研修への参加、町内の民間ジム利用などの際に、会場に設置されたQRコードを読み取ることでポイントを獲得。より積極的な健康づくり活動を応援します。
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貯めたポイントは、3つの方法で地域に活用できます。
1つ目は「子どもたちのために」。町内の保育所などに絵本を贈呈することで、未来を担う子どもたちを支援できます。
2つ目は「地域のために」。集落ごとに助成金として交付され、地域の活性化に役立てられます。
3つ目は「自分のために」。地域通貨「わかサイフ」のチャージ券と交換でき、町内の飲食店や商店で使用可能です。自身の健康づくりが、地域経済の活性化にもつながる仕組みとなっています。
3.工夫した点・特徴
工夫した点
・LINE公式アカウントで完結
これまで紙で管理していた ポイント取得・管理・交換の手続きを、すべてLINE上で完結。スマホ操作が苦手な方には町DX推進室がサポートし、住民のデジタル活用も推進しています。
・ポイントの使い道が選べる
「子どものため」「地域のため」「自分のため」の中から住民自身が貢献先を選べる仕組みがモチベーション向上へとつながった。
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特徴
・幅広い世代が参加
40代(18%)、50代(24%)、60代(23%)が多く、70代以上の方も積極的に活用。高齢者にとって難しいとされてきたデジタル活用の成功事例となりました。
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4. 結果・住民の声
結果
ポイント事業のスタートを記念し、「第32回若狭・三方五湖ツーデーマーチ(5/18〜5/19)」に特設ブースを出展。わずか2日間で500人もの新規友だち登録があり、本事業への期待の高さが実証されました。
参加人数:1,302人
総取得ポイント:1,173,441点
ポイント活用状況
自分のため:757,500円(1,515件/427人)
子どものため:353,441円(849件+端数)
地域のため:62,500円(625件/57集落)
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住民の声
事業の社会貢献性が高く評価され、以下のような声が寄せられています:
「自分のためというより、人のためになるならさらにやる気が出る!」
「できる範囲で恩返しをしたい。ポイントを貯めて地域の活性化につなげたい!」
5. 職員インタビュー
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今回、手続きの企画と構築に携わった健康医療課の松宮克也さんにお話を伺いました。
事業の背景と導入経緯
須藤:従来の紙ベースの健康ポイント事業では、どのような課題がありましたか?
松宮さん:紙ベースでの健康ポイント事業では、参加者の大半が比較的高齢層に偏っていました。特に30~50代の働き世代への健康づくりの働きかけが不足しており、若年層の健康意識向上が大きな課題でした。
須藤:社会貢献型健康づくりという仕組みを導入した理由は何ですか?
松宮さん:自身の健康づくりが子どもや地域のためになるという社会貢献の要素を加えることで、特に子育て世代の参加意識が高まるのではないかと考えました。また、LINEを活用することで、普段健康に関心の薄い若い世代にもアプローチしやすいと考え、若い世代への健康づくりを推進し、健康な暮らしにより住民の幸福度を高めることを狙っています。社会貢献型とすることで、健康づくりを起点としての子ども応援、地域づくり、地域経済活性化を目指しています。
須藤:住民の反応や参加のハードルはありましたか?
松宮さん:当初は、高齢者のデジタル対応に不安がありましたが、日常的に使用されているLINEを採用したことで、想定以上にスムーズな導入ができました。また、町DX推進室による定期的なスマホ相談会の開催で、操作に不安のある方々へのサポート体制を整えたことが、参加促進につながりました。
事業の効果と今後の展望
須藤:今回の取り組みで、どのような成果がありましたか?
松宮さん:目標の1,100人を大きく上回る1,302人が参加しました。特に従来参加の少なかった30~50代の住民の健康づくりの習慣化が進みました。また、予想以上に多くの方が「子どものために」ポイントを活用してくださり、地域全体で子育てを支援する意識の高まりを実感しています。
須藤:ポイント活用状況について、どのような分析をされていますか?
松宮さん:「子どものために」使われたポイントが全体の約30%を占め、予想を大きく上回りました。これは、健康づくりを通じて地域の未来に貢献したいという住民の皆さんの想いが反映された結果だと考えています。この結果は、社会貢献型の仕組みが効果的に機能している証と感じています。
須藤:今後の展開について教えてください。
松宮さん:2025年度以降も本事業を継続・発展させていく予定です。具体的には、エコ活動やボランティア活動など、SDGsの観点からも意義のある活動へポイント対象を拡大していきます。住民の皆さんにとってより魅力的な仕組みを作っていきたいと考えています。
6. さいごに
若狭町の取り組みは、「健康行動を地域貢献につなげる仕組み」として、住民の意識や行動に大きな変化をもたらしました。紙で運用していた健康ポイント事業をLINEで完全デジタル化し、より多くの住民が手軽に参加できる環境 を整えました。30〜50代を中心に健康意識が向上し、行動の変化が見られました。
この背景には、住民が 「自分の健康行動が、子どもや地域のためになる」 という実感を持てるようになったことが大きく影響しています。また、LINEを活用したことで自治体職員の業務負担も軽減されるという副次的な効果も生まれました。
このプロジェクトの成功には、健康医療課の松宮さんをはじめ、自治体職員の皆さまの尽力がありました。新しい仕組みの導入には課題も多かったと思いますが、住民の健康づくりと地域貢献を融合させ、理想的な形を実現できたことを嬉しく思います。
GovTech Expressは住民サービスの向上だけでなく、自治体職員の業務改善にも貢献するツールです。もし「健康づくりのDXに取り組みたい」「住民の行動変容を促したい」 という自治体担当者の方がいれば、ぜひ担当のパートナーサクセスマネージャーまでご相談ください。
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