【神戸市】まちのインフラを改善するために市民の声を聞く仕組み。公式LINEアカウントを利用することで、市民の声が4倍、通報処理時間は1/2に。
日本では法律によって道路等の管理責任者が定められており、例えば市道であれば市が維持管理を行うこととされています。
道路以外にも街灯、公園といった公共インフラの維持管理は行政が行っていますが、損傷を把握してくれる人と、メンテナンスしてくれる人がいないとどうなるのか、考えてみたことはありますか?
街路灯が切れたままであれば、不安を感じて夜道を歩きたくなくなり、道路の舗装が劣化したままであれば、タイヤのスリップで交通事故に巻き込まれる心配をして生活しなければいけません。
とはいえ、自治体の限られたリソースの中で、全ての公共インフラをチェックしたり、夜に街路灯が切れていないか確認することは現実的ではありません。
今回の記事では、より多くの市民が行政に情報提供を行えるようにすることを目的に、公式LINEアカウントから通報手続きを利用できるようにした神戸市の事例を紹介します。
1.自治体概要
2.取り組み
神戸市では、市内6か所にある建設事務所の職員が日々パトロールを行い、道路や公園の維持や修繕を行なっています。市道であれば総延長は6,056キロメートル、公園であれば1,694か所、面積にすると約2,640ヘクタールをカバーしています。
以前は電話のほか、追加ダウンロードが必要な専用アプリを使って市民はオンラインで道路損傷等の通報を行っていましたが、当時は専用アプリからの通報件数と通報するユニークユーザが思うように増えず、神戸市は解決策を模索していました。
専用アプリの場合、アプリのダウンロードや利用時に必要な作業(IDとパスワードの設定や個人情報の設定)が多いことが市民の通報時のハードルになっている可能性があると考えた神戸市は、2023年11月からLINEを入り口にした通報手続きを導入することとしました。
3.結果
LINEから通報できるようにした結果、専用アプリを導入していた頃に1,276件だった通報件数は、4,498件になりました。
また、通報のユニークユーザも477件から2,611件となり、以前より幅広い市民にオンライン通報を利用いただけるようになりました。通報ユーザが純増することで、より広いエリアの損傷の発見に繋がることが期待できます。
なお、電話で通報を受ける場合は受付から位置情報や損傷状況の把握に5分ほど要しますが、LINEからであれば位置情報や画像を送信できることでこの部分の時間は発生しません。つまり、LINEからであれば電話で受け付ける場合の半分の時間で通報の処理を行っていることになります。
このように、神戸市では通報件数を増やすことと同時に通報の受付時間の圧縮を実現することができました。
4.インタビュー
今回の手続きの企画と構築に携わった広報戦略部広報担当の藤田さんにお話を伺いました!
- 導入経緯
中原:以前は電話と専用アプリで通報できていたとのことですが、それぞれどのような課題を持たれていたのでしょうか。
藤田さん:アプリの場合、限られたユーザが何度も通報している状況だったので、まちづくりに広く参画していただくためにも、オンライン通報のサービスをたくさんの人に知ってほしい、利用してほしいと考えていました。そのためには投稿のハードルを下げることが大事だと思い、使い慣れたLINEアプリからの通報に切り替えることにしました。
電話の場合は位置情報や損傷具合を口頭で教えていただく必要があり、説明する側も大変だと思いますし、ヒアリングするコールセンターのスタッフも苦労している点です。
中原:その部分については、GovTech Express導入後は解消されたようですね。神戸市の場合、通報状況を地図を使い市民と共有する仕組みも利用されていますが、どのような思いで取り組まれているのでしょうか。
藤田さん:通報状況を市民間で共有する仕組みは以前使用していたアプリでも取り入れていました。公聴の観点で言うと、市に寄せられた意見などは公開していく必要があると考えていますし、意見は出してもらって終わりではないと考えています。市としてどのように対応したかを、市民の皆様に伝えることで、まちづくりに参画していると手応えを感じてもらえると考えています。
- 活用状況
中原:専用アプリなしで通報ができることについてどういった声がありますか?
藤田さん:ダウンロード要らないので使いやすくなったという声が届いています。実際に利用者から取ったアンケート結果によると70%以上の方に、満足しているまたはどちらかといえば満足していると回答いただいています。ただ、比較すると依然として電話からの通報が多い状況です。
中原:新しい手法を取り入れた時に、知っていただく取り組みも必要になりますね。神戸市ではLINEから通報できることをどのように周知しているのでしょうか。
藤田さん:市の広報誌へ掲載、地域の掲示板へチラシを掲示、地域団体の集まりでの案内、一部公園の案内板へQRコードステッカーの貼り付けなど様々な取り組みを実施しています。また、電話で通報いただいた方にはオペレーターよりLINE通報を案内、時間外など電話がつながらない場合はSMSサービスを利用してLINE通報の案内を実施することにより、電話からLINE通報への移行を推進しています。
- 今後について
中原:よりたくさんの人に通報してもらうという目標には近づいているようですが、電話とLINEからの通報が純増している中で、市としてどのように向き合っていきたいと考えてるか教えてください。
藤田さん:通報件数が増えたことで現場職員の業務が増えたことは課題として認識しています。そのため、現在、業務改善に向けた議論を庁内で行なっているところです。具体的には、LINEから送信された画像をAIにて緊急度判定ができないかなど、テクノロジーを活用することで課題解決を図っていきたいと考えています。
5.さいごに
自治体が行政手続きをデジタル化するツールを選ぶ際に、どういうことができるかという機能的なことがフォーカスされやすいですが、神戸市の事例から、市民に活用されるために心理的、物理的ハードルをどのくらい低くできるかという点がデジタル化を推進するうえで重要な要素であることが分かります。
GovTech Expressであれば、追加のアプリのダウンロード不要で、オンライン決済やマイナンバーカードを使った本人確認を伴う手続きを増やすこと ができるほか、申請や予約手続きも作成できるため、給付金申請やがん検診予約など多くの部署で汎用的に利用可能です。
健康や防災といった分野ごとにアプリ導入を検討されている自治体の中で、「費用をかけたのに市民の利用率が伸びない…」といった悩みを持つ自治体があれば、是非Bot Expressにご相談ください。
なお、GovTech Expressを導入いただいている自治体のうち148自治体が通報機能を導入していますが(2024年10月時点)、通報状況の地図表示は追加費用なしで利用できますので、利用を希望される自治体は担当のパートナーサクセスマネージャーまでご連絡ください。
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