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PUSH型申請サービス・給付金のデジタル申請・避難所チェックイン事例を紹介。デッカイギ登壇レポート

2024年1月5日・6日に開催された行政デジタル改革共創会議(デッカイギ)において、【地方から日本の「めんどくさい」をなくした話。橋下徹さんと。】というタイトルのBot Expressセッションを行いました。

Session 1では、スマホ市役所導入の3つの自治体担当者にご登壇いただき、給付金を3日で届けた話、20秒で完了する避難所受付、マイナンバーカードでファストパスを実現したPUSH型申請サービスについて事例を紹介しました。当日の映像と書き起こしレポートをお届けします。
※Session 2 の橋下氏と中嶋対談はこちらよりご覧ください。


<動画>

1. 【山形県庄内町】給付金を3日で届けた「LINEで申請・セブン銀行ATMで受取」

山形県庄内町 企画情報課 デジタル推進係 佐藤 和恵様
2021年総務課在籍時に行政改革の一環として、主に町外者向けの情報発信ツールとして活用していた庄内町LINE公式アカウントを、住民サービス向上を目的とした機能拡充を行い、以降運用を担当している。現在は電子申請全般に関わる業務に従事。町民が来庁せずとも思ったときにその場で申請できるような環境づくりを進めている。

山形県庄内町の佐藤です。給付金を3日で届けた「LINEで申請・セブン銀行ATMで受取」という機能を説明します。

庄内町は人口2万人弱で、予算規模も大きくありません。職員数は約200人で、デジタル推進係は私を除いて2名です。

LINEに集約しようということで、令和2年2月に機能を拡張しました。ワクチン接種予約をLINEで始めたところ、多くの住民が活用してくれ友だち数も伸びました。今は住民の6割超相当がLINEを友だち追加してくれています。

庄内町LINE公式アカウントにはさまざまな機能を実装しています。今日はその中でも電子申請である「LINEから申請」と「送金」機能を使った「LINEで申請・セブン銀行ATMで受取」をご紹介します。

これは、LINEで申請をして、セブン銀行の口座がなくても、セブン銀行のATMで給付金などを受け取れるというサービスです。住民の方からすると、受取までの日数がかなり短縮できるというところがメリットです。職員からするとデータ入力作業は不要、口座登録するための相手方登録も不要で、業務負荷が4割減と、かなりの負担減になっております。

手続きの流れですが、名前や生年月日をLINEで入力した後に、マイナンバーカードによる公的個人認証で本人確認を行います。申請が完了したら、町の方に情報が飛んでくるので内容を確認します。問題がなければ、住民側に「送金処理しました」という送金のお知らせを流します。住民の方はそのお知らせを受けて、セブンに行って支援金を受け取るというものになります。

実際のLINEの申請画面です。セブン銀行での受取動画をYouTubeにアップしておりますのでご確認ください。

庄内町で一番初めにこのセブン銀行ATMを使った事例が子育て世帯支援事業支援金です。令和4年度に行ったものになりますが、かなり好評いただきました。口座振替だと1カ月ぐらいかかっていた受取までの日数が、セブン銀行ATM受取だと3日に短縮できました。最後の方になると職員も事務に慣れてきましたので、申請すると翌日には支援金を受け取れるということで、1日に短縮することができました。

事後に住民に対してアンケートを取りました。LINE・Webフォーム・紙と3種類の申請方法を用意しましたが、98%以上の方が「LINEとWebフォーム」という電子申請を選択しています。また、70%が「申請が簡単だ」と回答されています。来庁する手間もなく、住民サービスが向上したなと思っています。

受取方法ですが、2割弱の方がセブン銀行ATMを選択しており、初回にしてはかなり良かったなと思っています。次回はセブンATMで受け取りたいという方は75%以上いますので、好評な仕組みだったのかなというふうに思いました。来年度も庄内町では補助金や支援金が複数予定していますので、セブン銀行ATMで受け取れるようにするなど、住民の選択肢を増やすということ進めていきたいなと思っております。私からは以上になります。ありがとうございました。

2. 【愛知県常滑市】20秒で完了する避難所受付「チェックイン機能」

愛知県常滑市 防災危機管理課 主任 永田 勇介様
入庁後、税務課、宮城県石巻市への震災派遣を経て、2019年4月より現職。常滑市では防災分野でのDXを推進しており、常滑市LINE公式アカウントへの防災リッチメニュー搭載のほか、防災アプリ、デジタルハザードマップの導入等を進めている。

愛知県常滑市の永田です。私からは、「避難所受け付けが20秒で完了。QRコードで避難所チェックイン」ということをテーマにお話をさせていただきます。

愛知県常滑市についてご紹介させていただきます。愛知県の知多半島西海岸に位置しておりまして、朱泥の急須や招き猫で有名な常滑焼という焼き物の産地になります。対岸部には中部国際空港セントレアがございまして、古くからの町並みと活気あふれるエアフロント地区が共存している町です。幸いにも今まで大きな災害に遭ったことはありませんが、この地域では南海トラフ地震が今後発生する恐れがあるということで、防災対策に力を入れています。

まず避難所チェックイン機能の導入経緯からご説明します。
南海トラフ地震が発生すると、人口5万8,000人のうち1万1,000人の避難者が発生すると言われています。避難所に来られた方には、受け付けのために紙の様式に氏名や住所等記入が必要で、多数の避難者が発生しますと、受付に時間を要し、受付待ち発生する恐れがあります

また、避難所の担当者が避難者の状況を把握しきれずに災害対策本部への報告が遅れてしまうということも考えられます。写真が昨年度の訓練風景ですが、100名の参加者避難者が一斉に押し寄せたことで、かなり行列ができてしまい、避難者の円滑な受け入れが課題となりました。その解決策を考えていたところ、鹿児島県さつま町様がQRコードを活用した避難所受付の機能を開発されたというBot Expressの事例記事を見まして、Bot Expressと連携し、今年度の訓練で実証実験をすることにいたしました。

機能を説明します。住民は、常滑市LINE公式アカウント上で、氏名・住所・電話番号を登録後、QRコードを作成します。次に、実際に避難してきた際に、そのQRコードを避難所の担当者に見せ、避難所担当者がQRコードを読み取るだけで避難所受付が完了するという仕組みです。

避難時に避難者が氏名や住所等の記入がなくなり、スムーズな受付が可能になります。また避難者の情報をシステム上でリアルタイムで管理することができるため、住民職員双方にとって負担軽減につながるというものです。

実証実験の概要は、氏名・住所などLINE上での事前登録を住民にお願いし、登録済みの方はスマホ受付、事前登録していない方は紙受付という形で、受付方法を分けて実験を行いました。

実際の訓練の風景です。

実証実験の成果ですが、一人当たりの受付時間が、紙受付60秒に対してスマホ受付20秒と、受付時間を3分の1に短縮することができました。スマホ受付では、QRコードを連続して読み取ることができるかなども検証しましたが、安定して動作することが確認できました。

参加者のアンケートでは約8割の方が「満足」と回答しています。事前受付が簡単にできた、書く手間を省くことができた、受付待ち時間が短かったという声を多くいただいております

避難所チェックイン機能の導入効果としては、スムーズな受付が可能になるとともに、市のLINE公式アカウント上で、リアルタイムの避難者数を随時確認できるという仕組みを構築したので、避難時に避難所の混雑状況を確認して避難することができます。職員にとっても迅速に避難者数を把握することで、速やかな支援につなげられるといった効果も確認することができました。

一定の成果を得ることができましたが、実用化に向けては幾つかの検討課題もございます。事前に登録できない体調等の情報をどのように管理するのか。また、ネットワークが使えない時はどうするか、スマホを持っていない方にはどのように対応するかなど、今後検討していかなければならないと考えております。

災害が起きないのが一番ですが、万が一そういった災害が発生したときに避難者を円滑に受け入れることができるよう、また、避難者にとってよりよいシステムになるように、今後も検討してまいりたいと考えております。

3. 【岡山県総社市】マイナンバーカードでスーパーファストパスを実現した「PUSH型申請サービス」

岡山県総社市 総合政策部長 梅田 政徳様
2008年に内閣府に入府し、経済財政、消費者行政等の分野に従事した後、内閣府副大臣秘書官を経て、2023年4月に総社市に出向。内閣府副大臣秘書官時代には、行政手続きの押印廃止やオンライン診療の解禁などのデジタル規制改革に携わる。総社市ではBot Expressとの連携協定を結び、PUSH型の給付金支給の導入など、「めんどくさい」をゼロにする市役所の実現に向けた取組を推進している。

総社市総合政策部長の梅田です。総社市のDXの取り組みのうち、PUSH型の通知サービスを中心に事例をご紹介いたします。

総社市は、岡山県の岡山市と倉敷市の間に位置をしている町で、人口規模は約7万人です。DX推進は3名体制で行っておりますので、人的リソースも決して多くないという中で行っている取り組みです。多くの市でもぜひ参考にしていただければと思っています。

総社市では、2023年7月20日にスマホ市役所を設立しました。このスマホ市役所を立ち上げるにあたり、「めんどくさいをゼロにする」という協定をBot Expressと締結し、全国のモデルとなるようなデジタル行政サービスをつくることを目指しています。協定内容の2番目に記載している「PUSH型」の給付金サービスと、生成AIを使った応答サービスについて、本日ご紹介いたします。

総社市のPUSH型通知サービスですが、多くの報道で取り上げていただいたので目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、2023年年末に
閣議決定をした「住民税非課税世帯向けの7万円給付」に向けて機能実装しました。

給付金に必要なことを考えた際、求められるのは「早く・簡単・漏れなく届ける」だと思いました。今までの行政サービスは、「ホームページに掲示をして申請をいただく」という形でした。これをトランスフォーメーションをするということで、「通知を送って確認をすれば手続きが完了する」。こういう形に変えた、というのがこの取り組みです。

仕組みをご紹介します。最初に初回の住民登録が必要です。住民登録内容と、行政の持っている情報とマッチングを行うことで、土台が整います。リストをもとに対象者に通知し、対象者が確認する、という流れです。住民登録はマイナンバーカードを使います。マイナンバーカードをかざしてICチップから情報を読み込むことで、住民の四情報が出てきますので確認して登録完了です。

画像二枚目、給付の流れですが、自治体が持っている住民税非課税世帯のリストと突合させて、通知リストを作成します。対象者リストに一斉通知を送ります。住民は、LINE上で、支給要件に当てはまってるか、支給を希望するか、役所が持っている口座情報に間違いないか、という確認を行います。4回タップをすれば手続き完了です。非常に簡便な形です。

従来は、郵送で行なっていたので、書類送付だけで2週間、手続きを完了するには1カ月ぐらい時間を要していました。どんなに頑張っても、かかってしまう印刷発送や返送などの手続きをなくすことで、最低でも2週間早く完了する、ということを実現しました。その分、事務負担も大きく軽減をしていくということになります。

実際に総社市では、12月11日に通知をして20日に支払いを完了するということができました。セブン銀行ATMの例がありましたが、口座振替ではなくセブン銀行ATM受取にすることで、即日振り込みなども可能となります。

今回の結果です。95%以上の住民が「非常に便利だった」と回答してくれています。

実際の声ですが、「すごく便利でした」というような回答があったのと、一方で、セキュリティー面が不安とか、そういった声も多少出てきているので、今後もしっかり気をつけていきたいと考えています。

次に、生成AIを使った応答機能についてご紹介します。ChatGPTの活用検討を進めている自治体も多いと思いますが、総社市ではマイナンバーカードと健康保険証の紐付けという話と、給食費の無償化事業ということのQ&Aで利用しています。従来は「検索して探す」という作業を住民の皆さんはしていたと思いますが、生成AIを活用することで「質問をするとそれに見合った回答が返ってくる」という形に変わりました。回答が求めているものと異なる場合もありますので、職員側で調整を行い精度を高めていっているところです。

最後に、私が考える「自治体でDXを進めるために必要なこと」についてお話しします。1つ目は、ユーザー(住民)が使いやすいプラットフォームを用意すること。これは今回LINEということになります。2つ目は、汎用性・柔軟性の高いシステム基盤です。これがDXを進める上で重要だと思います。給付金の事業が決まった後にシステムを作り込むのはなかなか難しいです。どんな事業でも当てはめることのできるようなシステム基盤が必要です。

今回の「給付金を最短で届ける」取り組みは、我々行政側だけでは難しい話でした。システムベンダーであるBot Expressと、知識・意識の共有が出来たからこそサービス実装をすることができたと思っています。本日紹介した事例は、全国でぜひ広がってほしい取り組みです。皆様の参考になれば幸いです。

4. 最後に

3つの自治体事例、いかがでしたでしょうか。Bot Expressは「世界からめんどくさいをなくせ」を企業理念とし、生活に必要な行政手続きを、デジタルであるべき簡単さに変えていく挑戦をしています。

スマホ上に役所窓口「スマホ市役所」を開設することが可能となる官公庁専用アプリケーション「GovTech Express」は、「自治体職員が自ら開発できるプラットフォーム」です。全国200以上の導入自治体では、日々職員の手によってオンラインの行政サービスが誕生しデジタル改革が行われています。
 
今回のデッカイギには、400名以上の自治体・中央省庁で行政デジタル改革に取り組んでいる方々が参加し、直接事例をお伝えすることができました。これからも、noteの事例マガジン事例共有セミナー事例BOOKの配付を通して、全国のスマホ市役所事例を伝え、行政サービスのアップデートを加速させていきたいと思います。

今回のセッションプレゼンスライドの送付を希望される方は、お問い合わせよりご連絡ください。

ご登壇いただいた総社市梅田様、庄内町佐藤様、常滑市永田様、ありがとうございました!

総社市梅田様(左)、庄内町佐藤様(中央)、常滑市永田様(右)

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